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櫻井ジャーナル「安倍政権が進める英語政策の目的は国民の英語力を向上させることにはない」 [政治・経済]

櫻井ジャーナル「安倍政権が進める英語政策の目的は国民の英語力を向上させることにはない」


櫻井ジャーナルからの転載になりますが、ここ数日物議を醸しだしている萩生田
大臣の「身の丈」発言に端を発し、英語の民間試験導入見送りが決まりました。
夕方のNHKニュースでも報じられていましたが、この問題は櫻井ジャーナルが
指摘しているように国民を愚民化するためのものと思います。

そして、この試験の中核を担っているのがベネッセコーポレーションであり、その
経営母体はかの宗教団体になります。したがって、このプランは政治的力学が大き
く働いたものになります。

また、背景には民間試験を導入すれば、その対策として塾や予備校など教育関係の
企業や団体も潤う。自民党東京都第11選挙区支部は05~11年の7年間に教育
関係の企業や団体から総額1289万円にも上る政治献金を受け取っていて、14~17年の4年間も、総額1160万円の献金を受けていることが指摘されて
いる。

要するに、すべてに官僚が画策するものには権力の支配と利権が存在するものと
見ていいものと思います。

彼らにしてみれば一石二鳥ということだったのでしょう。それがとん挫しましたが
数年後に再度内容と名称を変えて浮上してくるものと思われます。


(ここから)

 大学入試共通テストで活用されるとされていた英語の「民間試験」が見送りになったという。「2020年のオリンピック・パラリンピックを見据え」て進めてきた政策が破綻しているのだろう。

 私企業に試験を任せるという問題だけでなく、安倍政権が進めてきた英語教育政策に対する批判は英語教育に携わっている学者から批判されてきた。そうした批判は無視されている。

 萩生田光一文科相の格差容認発言が「民間試験」見送りの理由にされているが、格差拡大は安倍晋三政権も推進している新自由主義の基本。社会にはさまざまな理由で厳しい生活を強いられる人びとが存在しているが、そうした人びとを切り捨てるのだ。

 勿論、こうした考え方を否定する人も少なくない。社会的な弱者を救済するため、仏教には喜捨、イスラムにはザカートやサダカという仕組みが存在する。キリスト教にもそうした考え方があり、ヨーロッパの中世では「世俗の乞食さえも折々は、有産者に慈善という善行の機会をあたえるところから、『身分』として認められ、評価されることがあった」のだ。(マックス・ウェーバー著、大塚久雄訳『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波書店、1989年)

 こうした考え方を新自由主義は否定、強者による富の独占を推進するのだが、このイデオロギーは資本主義の基本原理。このイデオロギーが広まった19世紀には弱者を救済する仕組みが切り捨てられていく。イギリスでは1834年に新救貧法が導入されるが、この法律は庶民の貧困化を深刻化させた。

 貧富の格差が拡大すれば社会は不安定化、それを抑え込むために治安システムが強化され、他国を侵略して植民地化、富を奪うという流れ。その略奪した富も最終的には支配階級へ集中し、強大な私的権力が生み出される。

 ウォール街と敵対関係にあったフランクリン・ルーズベルトは大統領時代の1938年4月29日に次のように語った:「もし、私的権力が自分たちの民主的国家そのものより強くなることを人びとが許すならば、民主主義の自由は危うくなる。本質的に、個人、グループ、あるいは私的権力をコントロールする何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」

 新自由主義は私的権力に社会を支配させようというイデオロギーであり、ルーズベルトの定義を採用すると、それはファシズム。新自由主義とはファシズムの別名だということになる。

 この体制の中心にはアメリカの巨大資本、つまり私的権力が存在している。このアメリカを中心とする支配システムを支えている柱のひとつが基軸通貨としてのドルを発行する権利。その仕組みを維持し、潜在的なライバルを潰して世界制覇を実現するために存在しているのが軍隊や情報機関。そうした支配力によって英語が世界の「共通語」として扱われるようになり、英語を母国語とする人びとは有利になった。

 そうした情況を「言語帝国主義」と表現する場合もあるが、少し前からインターネット上の翻訳ソフトの能力が上がり、使えるレベルに達して言語の障壁が低くなっている。ところが日本語が関係すると相変わらず使えない。意図的にそうしているのではないか、つまり日本人が世界の情報に接しにくくしているのではないかという疑惑もある。

 この疑惑が事実かどうかは不明だが、日本人が外国へ情報を発信したり、外国の情報を入手すること、日本人が外国人とコミュニケーションすることを日本の支配者は嫌がっている可能性が高く、日本の庶民の英語能力が上がることも嫌がっているのではないだろうか。

 英語云々の前に、庶民から教育を受ける権利が奪われつつあることは本ブログでも指摘してきた。進学の仕組みが幼少期から資金を投入できる家に有利で、学費も高騰している。

 言うまでもなく、学費が高騰すれば庶民には大きな負担。例えば、2012年にイギリスのインディペンデント紙が行った覆面取材の結果、​学費を稼ぐための「思慮深い交際」​を紹介する、いわゆる「援助交際」を仲介するビジネスの存在が明らかになり、​ギリシャでは食費を稼ぐために女子学生が売春を強いられ​、売春料金が大きく値下がりしていると伝えられている。

 アメリカ上院のエリザベス・ウォーレン議員によると、アメリカでは教育が生活破綻の大きな原因になっているという。少しでもまともな教育を望むならば、多額の授業料を払って私立へ通わせるか、公立の学校へ通わせるにしても不動産価格の高い住宅地に引っ越す必要がある。低所得者の通う学校では暴力が蔓延して非常に危険な状態で、学習どころではないのだ。

 トルーマン・カポーティは『叶えられた祈り』の中でウォール街で働いているディック・アンダーソンなる人物に次のようなことを言わせている。

 「二人の息子を金のかかるエクセター校に入れたらなんだってやらなきゃならん!」(トルーマン・カポーティ著、川本三郎訳、『叶えられた祈り』、新潮文庫)「ペニスを売り歩く」ようなことをしなければならないというのだ。

 ウォーレンによると、そうした経済的な負担に耐えられなくなり、破産する人が少なくないという。結局、経済的に豊かな愚か者が高学歴になる一方、優秀でも貧しい子どもは落ちこぼれていくことになる。

 アメリカはそれより進んでいると見られているが、少し前から話題になっているのは「シュガー・ベイビー」なるシステム。女子大学生(シュガー・ベイビー)と富裕な男性(シュガー・ダディー)を引き合わせ、「デート」のお膳立てをするというビジネス。売春の斡旋と見られても仕方がないだろう。現代版のクルチザンヌだと言う人もいる。

 登録している大学のリストを見ると、有力校と考えられている南カリフォルニア大学(583名)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(614名)、コロンビア大学(1008名)、ニューヨーク大学(1676名)も含まれている。

 日本で進められている英語教育の目的は日本人の語学力を引き上げるにことにあるのでなく、英語を利用した支配階級と被支配階級の固定化にあるのではないかとも思える。少なくとも、そうした方向へ動きそうだ。

 蛇足だが、1980年代に某大手企業の役員からこんなことを聞いた。アメリカへ進出するにあたり、語学力で送り込む人間を決めたのだが、失敗に終わった。そこで営業力で選んだところ事業は軌道に乗ったという。


(ここまで)


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