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米国はソフトランディング出来るか [社会・経済]

 -これまでの経緯-
 現在世界中を駆け巡っている最大の問題は米国金融危機であろうと思います。

    問題の核心は米国発金融危機がソフトランディングするかどうかです。最悪の場合は米国金融機関のメルトダウンからドル失墜、金融恐慌が起こり、世界恐慌へと発展する可能性があります。

     これまで、3月16日JPモルガンによる大手証券ベア・スターンズの救済合併に始まり、7月13日には経営不安に陥ったファニーメイとフレディマックに対し公的融資を行うと発表。9月10日には米国証券会社リーマン・ブラザーズが赤字決算を発表したことから同社株の暴落が起こり経営破綻、続いて9月15日にはリーマンの影響を受けて世界規模の保険会社AIGも株の暴落から経営が悪化し公的融資を受け救済されることになった。そして、追い打ちをかけるように9月25日全米6位の貯蓄金融大手ワシントン・ミーチュアルの経営破綻している。

    これに対応して、米国政府はAIG救済後に総額75兆円に及ぶ不良債権買い取り機構の設立を決め、法案成立で議会との調整が難航していましたが近日中に両者の妥協案がまとまりそうです。

    しかし、この法案の最大の問題点は金融機関救済のための法案であり、現実問題としてローン返済が滞り、住む住宅を失った人々や、まさにこれからそのようになる可能性のある人々の救済が視野に入っていないことです。今年5月~7月にかけて最大12万円の一時戻し減税が小切手で行われたことが記憶に新しいことと思いますが、夏以降にはその効果は失われ、ほとんどが借金の返済、貯蓄に回され、物品購入に回された分は少なく消費押し上げ効果は少なかったのが実情でした。

 -サブプライムローンとは-
 
 サブプライムローンとは低所得者向けのローンで返済リスクを抑えるため利子を高めに設定されているものです。
 
 内容をわかりやすくするために身近に捉えて話をしようと思います。

    今、貴方が日本で、4000万円の住宅を購入し、住宅ローンを組んだとします。頭金として1000万円用意し3000万円を借り入れ35年ローンで返済計画を立てたとすると35年間固定金利は利用できないので
                  当初10年間3.8%固定金利で
                          10年後5%
                           20年後6%
                           30年後7%
   の変動固定金利となったと仮定します。その場合、総額約6000万円返済、毎月の返済額は1年~10年は11万円(ボーナス22万円年2回)中間略30年目以降は14万円(ボーナス27万円年2回)の計算になります。
    そのほか必要な諸費用として、10年単位で修繕費用200万円、毎年の固定資産税、都市計画税として、年約21万円(当初は住宅減税もあり14万円)とあります。さらにマンション管理費等も見込みますので当初10年間は減税を考慮しない場合、毎月の負担額はおおよそ17万円(ボーナス支払い分も平準化すると毎月21万円)となります。これでもかなりの負担です。

 -米国住宅ローンで借りると-

  これを米国に置き換えると、低所得者向けのサブプライムローンを商品として扱う融資専門会社(銀行ではありません。日本流に言うとサラ金と似ています。融資の資金は銀行から借り入れるので自ずと貸出金利は高くなります)から借りることになります。
  融資専門会社は次のように言うでしょう。「毎月少ない返済額で家を購入できますよ」「数年後には返済額が増えるかも知れませんが、住宅価格は今も上昇し続けていて、将来の運用資産としても有望で、今買っておかないと損しますよ」と甘い誘惑に近い話を持ちかけたと思います。融資専門会社としても、多く融資すればするほどその運用益は多くなり、仮に返済が出来なくなった場合には住宅を取り上げ転売すれば住宅価格の上昇分で損はしないと考え、低所得で返済不能の可能性が高い人にも貸し出していたことだろうと思います。そのため、最初の3年間は低金利で借りられることが融資専門会社から説明されます。

   そうすると、当初3年間の金利を低く見積もり3.8%とし、その後は13%から1%刻みで金利が増えたしてシミュレーションすると、当初3年間はボーナス込みで返済額は毎月14万円になります。
  ところが、4年目以降は毎月返済額が35万円ととんでもない金額に跳ね上がります。さらに35年間の総支払額は約1億2500万円となり、低所得者には到底払える金額ではありません。購入者は住宅価格の上昇が続いていたので、家屋の転売や住宅価格の上昇分差益から、ローン支払いを軽減できると踏んだのだろうと思います。しかし、住宅価格の減少に転じた現在ほとんどの人々が住宅を手放さざるを得ない状況となり、立ち退きを迫られても退去しない人々がいることはTVの報道でも眼にしていると思います。また、金利が変更になる4年後が1,2年先という人々であっても住宅も転売できず迫り来る支払い負担増加を前に憂鬱な日々を送っていることだろうと思われます。

 -サブプライムローンの問題点-

 このようなサブプライムローンの大きな問題点は低所得者のほとんどが将来的に上昇する住宅金利の変動を知らなかったことでした。大部分が低所得者と考えるとそのような金利計算と返済計画に疎く、将来的な負担増額の可能性を十分説明されていなかったのだろうと思います。契約書類にはそのことがかなり小さい字で書かれていたと言われています。日本でも携帯電話各社でありましたね。

    従って、自分も家を持てるかも知れないと考えた人達は融資会社から資金を借り入れ次々と住宅を購入し、将来の支払いに何の疑念も持たなかったのだろうと思います。世間的に知人、友人が住宅バブルで儲かったという話を聞けばなおさらのことです。かっての日本と非常に良く似ています。誰も住宅バブルが弾けることは予想していなかったことでしょう。

  そして、被害は低所得者だけでなく、中産階級の人々にも及んでいます。セカンドハウスやコンドミニアムを購入した中産階級の人達も、景気の悪化に伴い解雇、資産運用の失敗などで家計に問題が生じたりすると返済能力を失いかねず、住宅は2回支払いが滞ると債権会社の差し押さえ対象になります。



 -融資会社と投資銀行そして世界へ-
 
 次に融資を行った融資専門会社は貸した3000万円を住宅建設会社に支払います。その主な借入先は銀行ですが、融資顧客が多くなると銀行だけでは貸し出し仕切れないため、ここに投資銀行が介在しそれらの住宅資金を証券化(RMBS:住宅ローン担保証券やABS:資産担保証券)し、それらの証券化されたRMBS、ABSが世界中の投資銀行や機関投資家に売られ資金調達がされる仕組みになっています。そして、このRMBSやABSの安全性を保証するため、モノライン(金融保証保険)というのを掛け証券の保全をしています。
 簡単に言うと貴方が借りた3000万円は100万円ずつの証券として各銀行や投資家がが買い、100万円の価値を保証するためにモノラインに保険料を払い保証してもらうということになります。

     しかし、今回住宅バブルがはじけたために証券の価値が下がり30万円になったとすると、70万円の損失を銀行や投資家がかぶり、モノラインも70万円を補填できず、資金不足に陥り、破綻するという事態になっています。今回のサブプライムローン問題は証券化の過程で多くの利潤や手数料が加算されるため、その総額は全世界で1480兆円と見積もられています。従って融資を行った融資専門会社は未返済のローンを多く抱え込むことになり、借り入れ先の銀行へ返済が出来ず、資金繰りの悪化から倒産が続出している。当然のことながら融資専門会社に融資した銀行も資金の回収が不能となり不良債券化することになる。銀行の収益と資本が不良債権を償却出来るだけのものがあれば良いのだが、そうでない場合は同様に資金繰りの悪化から経営破綻します。

    今回のワシントン・ミーチュアルの経営破綻は取り付け騒ぎが発端となっています。自分の預けている銀行の経営が思わしくないと言う風評が広がれば、当然今の内に現金を引き出しておかないと危ないと考えます。今回はそのような人々が殺到し銀行の資金不足、株価の低下などによる自己資本不足から起こったものです。今後、住宅価格の減少がさらに続くようだと銀行の経営悪化による破綻増加は避けられないと思われます。

  インターネットでサブプライムローン問題を調べてもその仕組みが理解できない方も多いと思いますが、少しは理解出来たことと思います。但しわかりやすくするためCDS、CDO、ABCPなどには言及していません。

 -はたしてソフトランディングするのか-

 では、最初の課題である米国金融危機はソフトランディングするだろうか?という問題ですが、今回のサブプライムローンに端を発した金融危機は金融化証券が多岐にわたり複雑化して全世界に広がっていますので、住宅価格の下落もあり現時点の損失額を確定できないことに尽きます。

    今回米国政府が金融津波の被害をこれ以上拡大させないために75兆円の金融安定化策を取ろうとしているが、9月29日時点で上下両院で採決し成立する見通しとなっています。その内容は①75兆円を数回に分けて投入する②金融機関経営者の報酬や退職手当の制限③公的資金の運用を監視する第3者委員会の設置④金融機関のワラントを政府が取得する。という骨子となっている。
    まず、第1点は破綻していない銀行が公的融資に応じるかどうかです。今回の法案では損失が確定していない段階なので政府としては買い取り債権額が安ければ安いほど国民負担が少ない。そのため安く見積もる可能性が高いことです。銀行としては高ければ高いほどよい。仮に100万円の評価額の債権を先述した30万円で買い取っても70万円の損失が銀行に発生し、さらに住宅価格の下落が続き20万円に下がったとすると今度は政府(国民)の損失が増えることになります。
   
    この政府の損失が問題で、米国政府自体の信用不安からドルの下落を招き、基軸通貨としての信用失墜、ドルが紙切れとなり、世界恐慌を引き起こす危険性があります。そのため中国などは米国国債ドルを売りユーロに切り替えていると言われています。

    さらに今回の買い取り対象には銀行傘下の証券化を専門に行う特別目的会社、簿外資産やヘッジファンドの資産は入っていないので実効性に疑問があり、経営者の報酬、退職手当制限を考えると、例えつぶしても自分の報酬を得る方が良いとは考えないものかと思う。また、その投入が状況を見て数回に分けて行われるとすると、気づいた時には手遅れとも考えられます。現在の米国金融危機は日本が3年を要したのに比べそのスピードは早く半年で起こっています。これから10月に入ると米大手銀行の第3四半期の決算が相次いで発表されることになっていて、巨額の損失計上、株価急落、信用不安という混乱が起こる可能性が高いと思われます。 

  そして、パンカメがメリルリンチを吸収して債務が60%増加して2兆5千億㌦、JPモルガンもベア・スターンズを買収して債務が8%増加して1兆6千億㌦、シティも2兆㌦と3行の債務はAIGの2倍に達し(大きすぎて潰せない)規模になっている。(どうも計画的なような気がする)これで大手銀行はいつでも公的支援を求められる準備ができた状態である。だから、潰れるととんでもない状況になるということです。

 9月30日付けの夕刊で「NY株、最大の下げ 終値777㌦安」というニュースが飛び込んできた。昨晩ブログを書いていたのだが、こうも早く反応が出るとは驚きであった。

  市場が政府の対応策に疑問を投げかけていることになる。
あるいは闇の勢力、いわゆるヘッジファンド等が利益確定のために売りを急いでいるのか、それとも銀行の連鎖倒産の臭いを嗅ぎつけての売りかである。
 
 次回はここ2週間ほどの間に読んだブログや書籍を元にして今後の動向について考えたことを書きたい思う。


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