2枚のコンピューターチップ間で初の量子テレポーテーションに成功。情報を瞬間転送(英・デンマーク共同研究)


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量子もつれの不気味な遠隔作用

 このテレポーテーションは「量子もつれ」という現象を利用することで可能になる。

 量子もつれの関係にあるふたつの粒子には不思議なつながりがあり、片方の状態が確定すると、そのペアがどれほど離れていようとも、もう片方の状態までが瞬時にして確定してしまう。

 つまり、どういうわけか両者の間では情報がテレポーテーションしてしまうのだ。

 現在の物理学では、光よりも速く移動できるものはないとされている。にもかかわらず、量子テレポーテーションでは、情報が速度の制約を破っているかのようであり、かのアインシュタインが「不気味な遠隔作用」と評したこともある不可思議な現象だ。

 しかしどれほど不気味で不可思議であろうと、うまく制御できれば素晴らしい応用可能性があるのは間違いない。今回の研究は、その実現へ向けた大きな一歩だ。




2枚のコンピューターチップ間で量子状態を転送

 研究チームは、2枚のチップ内にもつれた関係にある光子のペアを作り出し、片方を量子測定するという実験を行った。これによって一方の光子の状態が変化すると、瞬時にしてもう一方のチップの光子の状態も変化したことが確認された。

 「実験室に置かれたそれぞれのチップの光子に単一量子状態を作り出し、高品質なもつれのリンクを実証することができました」と研究著者のダン・ルウェリン氏は説明する。

 「各チップはもつれを利用したいくつものデモを行うようプログラムされていました。一番の目玉は、2枚のチップのテレポーテーション実験で、粒子の量子状態を量子計測によってチップからチップへと転送することができました。この計測は、もつれのリンクを同時に崩壊させるという、量子物理学の不可思議な振る舞いを利用したもので、量子状態を受信チップの粒子に転送することができます。」



量子コンピューティングのさらなる発展へ向けて


ルウェリン氏によると、テレポーテーションの成功率は91パーセントだったそうだ。

 また、この成功のほかにも、もつれスワッピング(中継器を経由して、直接作用することなく粒子間で状態を転送すること)や最大4つの光子とのもつれを作るなど、量子コンピューティングにとって重要な機能を実行することにも成功したという。

 なお、今回はチップ間という短い距離での実験だが、長距離を対象とした研究を見てみれば、こちらでも大きな成果が挙がっている。最初は部屋の中での実験だったが、その後25キロ、100キロと続き、最終的には人工衛星を経由して1200キロの量子テレポーテーションに成功しているのだ。

 さらにコンピューターチップを対象とした分野では、1枚のチップ内での転送なら過去に成功事例があった。だが、別個の2枚のチップ間での成功は史上初のことで、量子コンピューティングにおけるブレークスルーになるだろう。

 この研究は『Nature Physics』(12月23日付)に掲載された。

追記(2019/12/31)タイトルを修正して再送します。

References:Information teleported between two computer chips for the first time/ written by hiroching / edited by parumo


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科学の世界の進展はすごいものです。

もうここまで来たのか!

という感じですね。

これが将来実用化されると、スタートレックに出て来る

転送も物理的に夢でなくなります。